ProSoundEffectsブログ

「フリーランスとして携わる効果音の世界」- 安江史男(サウンドデザイナー)

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Pro Sound Effects 日本語インタビュー #3

インタビュー第3回のゲストは、サウンドデザイナーの安江史男さんです。フリーランスという立場で活動中の安江さんは、コマーシャルやアニメ、映画へ高いクオリティの効果音を提供されています。

留学して音楽ビジネスを勉強されたり、DJとして活動されたりと、サウンドデザイン以外にも知識が豊富な安江さんの考え方や仕事のプロセスなど、色々と語って頂きました。


 

(PSE)今回はインタビューを快諾頂きありがとうございます!先ず始めに、安江さんの自己紹介をよろしくお願いします。どんなキッカケで効果音のお仕事を始められたのでしょうか。

(安江)僕は現在、音響効果と選曲をさせていただいています。媒体は、CM/Web広告がメインですが、あまり枠組みを決めていないので、幅広く関わらせて頂けるものに音を提供させていただいています。作業内容としては音響効果の方がかなり多いです。

キッカケは、元々選曲に興味があったので、音響効果の会社に入ったのですが、そこで「音効は効果音もやるんだよ」と聞き、「そうなの!?」というところから始まっています。

そんなことできるんだろうかと思いながら作業しているうちに、これは面白いと感じ、あれこれやっているうちに、いつの間にか効果音がメインになっていった感じです。

今でもPro Toolsと毎日にらめっこしてる自分にはびっくりしてます。

 

(PSE)安江さんはカリフォルニアに留学をされていた様ですが、大学ではサウンドを勉強されたのでしょうか。在米時代はどんな生活を送り、どんな事を体験されていましたか?

(安江)留学中は著作権等の音楽ビジネスの勉強をしながら、他にインターンとして、映画のトレーラーの選曲家(Music Supervisor)の元でアシスタントをしたり、ラジオ局でボードオペレーターをしていました。

この時期の経験からメディアに対しての選曲に興味を持ち、音響効果の会社に入るキッカケにもなりました。

DJしたり、いろんなジャンルの音楽をこぞって聴いていたのもあり、曲の知識にはある程度の自信もあったので。効果音に関しては正直何もやっていませんが、不思議と留学中の体験が仕事に役に立つ機会があります。

 

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(PSE)安江さんの社名である「TACIT KNOWLEDGE SOUND」の由来を教えて下さい。私も音楽をやっているので、TACITと聞くと「譜面を弾かない」を連想します。

(安江)Tacit Knowledgeは日本語で、「暗黙知」と言います。端的に説明すると、「書き残したり、言葉にして他の人に伝えることが難しい知識」です。

音響効果の仕事も言葉にできなかったり、ざっくりとしたオーダーから始まることが多いので、紐づくところが多いと感じたので社名にしました。

「譜面を弾かない」というのもいいですね!何年も譜面と向き合ってないです笑

 

(PSE)ご使用されている機材やソフトウェア、そしてご自身のスタジオ環境について教えて下さい。そしてお持ちの機材・ソフトで一番気に入っているものはどれでしょうか。

(安江)DAWはPro Toolsを使っています。オーディオインターフェースはFireface UFX+、スピーカーはFocal Trio 6 beです。プラグインは基本はfabfilter Pro-Q、iZotope RX7、Avid Reverb One、Slate Digital VerbSuite Classics、Serato Pitch’N Timeを使い、空間づくりでAudio Ease Altiverb、コンプレッサーを使う場合はAcustica Audio Ultramarine4を使っています。

一番気に入っているのは、Roger Mayer 456HDです。ほとんどの場合デジタルで終わってしまいますが、効果音を少し際立たせたいなどある場合には、個別に通してアナログのコーティングをしてもらったり、完パケまでさせてもらえる場合にトータルミックスをバウンス前に通して最後の味付けをしたりします。うちにあるマイク等は除き、唯一のアナログ機材です。

 

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(PSE)新しいプロジェクトを始められる際のワークフローを教えて下さい。何か特に気に掛けている事や、必ずやられる事はあるのでしょうか。

(安江)映像の仕事がほとんどなので、映像の場合でお話ししますが、まずは一度全体を見て、内容把握と効果音必要箇所の判定をします。

一番気をつける事は持っていない素材、あるいは収録せざるを得ない素材があるかどうかの判定です。CMやWeb広告は時間がかなり限られる場合があるので、音がないとなると、手持ちにあるスケジュールで、素材を収集して収録して映像に当てるまでの計算をする必要があります。

この判定を失敗すると、進行に関わるので、だいぶ気をつけています。

 

(PSE)安江さんがPSEライブラリを導入するに至ったきっかけを教えて下さい。特に気に入っているPSEライブラリを教えて下さい。どのサウンドをよくお使いになられますか?

(安江)素材のレベルアップを図りたいと思ったのと、上記の持っていない素材の件もありましたので、導入を決めました。

Search主体で使用しているのでどのライブラリが、というのは正直わからないですが、いわゆる映像の動きに合わせてつけていくものは、とりあえずSearchで検索かけてみるところから始めています。

 

(PSE)PSEライブラリを導入される以前は、フォーリースタジオで録音からされていたのでしょうか。もしくは既存のライブラリを使われていましたか?

(安江)既存のライブラリと、うちで収録した素材を使っていました。収録についてはiZotope RX7のおかげで使える素材にできています。

 

(PSE)PSEライブラリを導入されて、安江さんのお仕事のクオリティや効率はどのように変化しましたか?

(安江)劇的に向上したと思っています。アプリのSearchの使いやすさで音探しがし易くなりましたし、音も「ザ・素材」ではなく、生々しさを持っているので、立体感がより出せるようになったと感じています。

 

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(PSE)映画、ゲーム、アニメ、CM…それぞれ映像の意図や演出、効果音の量など全くと言って良いほど違います。違ったプラットフォームのサウンド制作をされる際、特に気を付けていることはありますか?

(安江)それぞれ、効果音と同じく音楽の使われ方も全く違うので、音楽に対しての効果音の住み分けは気をつけています。

CMの場合は総尺が限られてくるため、要素が詰め詰めになったりするので聴かせどころをどうするか、映画やアニメは、音楽がない部分とある部分があるので、音の流れをどう作っていくか、その辺りは気を配っています。

 

(PSE)効果音業界も大手スタジオや放送局に勤められるだけでなく、フリーランスの方々が増える傾向にあると思います。テクノロジーの進歩に伴って、お仕事の形態も変わってきているのでしょうか。

(安江)僕がフリーランスでもやっていけると思ったきっかけの一つに、iZotope RXの存在がありますので、RX以降で形態はかなり変わったんじゃないかと思います。

昨今はテレワークもあり、リモート作業が増えていますが、これが定着すると、東京じゃなくても良いという選択肢が増えるなどあるかもしれません。ただ、個人的にはスタジオに伺って、監督やミキサーさんと完パケを作っていくほうがいいとは思っています。

 

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(PSE)私の個人的な観点なのですが、ITの影響もあってアーティスティックな理由がない限り、効果音は「作る時代から買う時代」に変化してきている気がします。安江さん自身はどう思われますか?

(安江)簡単なテロップなどは買ってそのままつけるというのは、一昔前に比べると、全然できる物にはなってきていると思います。

ただ、音を組み合わせる、プラグインで加工する等、色々絡み合わせることがほとんどではあるので、なかなか買う時代とも言い難いところはあります。

その絡みの中でPSEの素材が物を言うのはいうまでもありませんが、それを買う時代ということであればそうかもしれません。

 

(PSE)最後の質問です。TACIT KNOWLEDGE SOUNDの、もしくは安江さん個人の今後の野望や目標はありますか?

(安江)昨今の影響でまた何かの形で時代が変わる気もしています。そこをしっかり乗り越えつつ、常に追う姿勢で成長できれば良いと思っています。

野望、やっぱり作業場を広くしたいですね(笑)相当頑張らないといけませんが。

 

(PSE)インタビューありがとうございました!今後ともPSEをどうぞよろしくお願いします。

(安江)こちらこそありがとうございました!PSEは僕の一番近いところにあるとても大きな引き出しです。探れば探るほどそのライブラリの下地に驚きます。音自体がアイデアをくれることも多々あります。これからも立体的な広がりを持つ音を期待しております!

 


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安江史男(やすえ ふみお)

愛知県春日井市生。カリフォルニア州立ノースリッジ大学で音楽ビジネスを学ぶ。

外国人コーディネーターを経て、音響効果の世界へ。

TVCM、Web、イベント等、多種多様な効果音が必要な作品に従事。選曲も扱う。

DJとしての活動も顕著。

公式サイト: https://www.yasuefumio.com

レーベル: www.bigpierecords.com