「Borderlands 3」「Call of Duty Modern Warfare」「Assassin's Creed」などの大ヒットゲーム、他にも大作映画やテレビの効果音を手掛けるワトソン・ウー氏とPSEがチームを組み、ワトソン氏の秘蔵のコレクションをライブラリ化しました。
リリースに伴い、ワトソン氏のバックグラウンドやサウンドレコーディングに対するアプローチなどをインタビューで語って頂きました。
コラボレーションの第1弾としてリリースされたライブラリ「Wu Collection: Polaris Sportsman ATV」では、四輪駆動の車のサウンドを多角的に録音しています。加速、隣を通過する音、エンジンのアイドリング、エキゾースト、クラクション、ギアシフトなど、ドライブのシーンの表現をより豊かにするサウンドが、オンボードとオフボードの両方で収録されています。
(ワトソン)米国でサウンドデザイナーとサウンドエフェクト・レコーディング・アーティストとして活動しているワトソン・ウーと申します。
私のバックグラウンドは、作曲、音楽教育、クラシック、電子音楽、ロックなどのジャンルの音楽演奏です。だいぶ昔の話ですが、ゲームの音楽を作曲していた時に、クライアントから効果音のデザインができないかと聞かれました。試してみるとそれがとても上手くいき、効果音が大好きになりました。当時市場に出回っていたサウンドライブラリのクオリティにかなり不満を持っていたため、自分で録音して仕事をするようになったのです。
私が得意としている専門分野は、銃声、爆発物、レースカー、航空機、90,000人以上のスタジアム規模の群衆など、とてもラウドなサウンドを録音することです。
(PSE)サウンドレコーディングについての哲学を教えて下さい。
(ワトソン)私のサウンドレコーディングに対する哲学は「オーバーレコーディング」することです。オーバーレコーディングとは、可能な限り多角的に多くのチャンネルを録音することです。メモリーカードの価格も安くなっていますし、バッテリーの容量も上がっているので、それをしない理由がありません。
(PSE)レコーディングへの技術的なアプローチについて教えて下さい。
(ワトソン)私はミッドサイドマイクをとても気に入っています。ミッドサイドを使えば、ミックスの際にMid(モノ)もしくはMidとSideを使ってステレオにすることが出来ます。もし可能であれば、Ambisonicフォーマットで録音する場合もあります。Ambisonicプラグインを使えば、回転させたり、傾けたり、フォーカスを変更したりすることも出来ます。そしてサウンドフィールドをステレオ、5.1、7.1などサラウンドミックスをすることも可能になります。
(PSE)レコーディングセッションでの面白いエピソードはありますか?
(ワトソン)数年前、私はプラネットコースターというゲームの仕事をするために雇われました。私の役割は、様々なジェットコースターの音を、乗っている人と見ている人の視点からキャプチャーすることでした。
ものすごく速く回転している乗り物があって、私はなかなか緊張しました。そんな乗り物に乗った体験はもう何年もありませんでしたから。勇気を出して乗ってみたら、レコーダーの電源が何度も切れてしまったのです。何度か失敗したあと予備のレコーダーに手を伸ばしました。
バッグから予備のフィールドレコーダーを取り出しているとき、外部バッテリーが一部外れてることに気がついたのです。そこでこの問題の原因はG(重力加速度)なのではないかと推測しました。解決するために、どれだけGが発生してもバッテリーが動かないように小さなタオルを押し込みました。そしてその後…私は録音を完了するため、このジェットコースターに7回も乗らなければいけませんでした。
Watson Wu(ワトソン・ウー)
・サウンドエフェクトプロデューサー
・サウンドエフェクトレコーディングアーティスト
11歳から声楽とクラシックピアノのレッスンを受け始め、声楽の教授に感化されて中学校時代から音楽のキャリアを志す。フロリダの大学時代に様々なバンド活動を経て、2001年から映画、TV、コマーシャル、ゲームのサウンドを手掛けるようになり「Assassin's Creed」「Transformer」など様々な大作に関わっている。
Watson Wu 公式サイト: https://www.watsonwu.com